「運転者 未来を変える過去からの使者」を読んだ
「運転者」*1という本を読みました。
久しぶりに物語を読みたいと思い何気なく選んだのですが、読んでみて本当に良かったです。
自分の価値観の狭さに気付かされました。
この本の著者は喜多川泰*2さん。
大手の学習塾の就職し経験を積んだ後、聡明舎という塾を設立。人間的成長を重視した塾として話題となり、塾の生徒から授業の前に話していた教訓などを本にしてはどうかと言われたのをきっかけに、2005年から作家としての活動を開始されたそうです*3。
喜多川さんの本を読むのは初めてでしたが、本作を読んでほかの作品もぜひ読みたいと思いました。
この後の文章はネタバレを含むのでご注意下さい。
あらすじ
物語の主人公は生命保険の営業マンをしている40代男性。
給与が営業成績で決まる日々に、精神的余裕を奪われながら過ごしています。
そんな中、以前運よく獲得した大量契約が短期間のうちに一気に解約に。
大幅に給与が減ってしまうという焦燥感にかられ、不登校の娘や独り身になってしまっている母についても考えなければならず一杯一杯。
そんな時、不思議なタクシーが彼の前に現れます。
なぜか彼の状況を事細かく知っている運転手は、「人生の転機となる場所に連れていく」と言って様々な場所に彼を連れていきます。
初めは怪しさしか感じていなかった主人公ですが、運転手との会話から物事の新たなとらえ方を知っていきます。
心に残った言葉
本を読んでいていくつか心に残った言葉をそのまま引用して記しておきます。
"基本姿勢が不機嫌な人に、毎日の中で起こる幸せの種を見つけることなんてできない"
"あとから考えれば『あそこが始まりだったな』と気づく"
"損得じゃなく『興味を持つ』"
"人間の身体って、ひとつのことをずっと続けているとそれをやるのに適した仕様に変わっていくんですよ"
"運は<いい>か<悪い>下で表現するものじゃないんですよ。<使う><貯める>で表現するものなんです。"
"どんなことが起こっても、起こったことを、自分の人生において必要だった大切な経験にしていくこと、それが<生きる>ってことです。"
"誰かの努力、ひたむきな姿勢は、他の人に幸せをもたらす力がある"
"世の中は誰かが頑張る姿からもらったエネルギーの集合体"
"<今すぐ、自分だけ>って考えすぎなんですよ。自分の人生が延々と続く命の物語のほんの一部であるってことを知らないんです"
"あなたがその物語に登場したときよりも、少しでもたくさんの恩恵を残してこの物語を去る。つまり、あなたが生きたことで、少しプラスになる。それこそが、それこそが真のプラス思考じゃないかと思うんです。"
"自分のしたことよりも得ることをできる限り少なくして、それでもなおかつ、得るものが多い、そんな人生"
感想
冒頭にも書きましたが、この本を読んで価値観の狭さに気づかされました。
新しい価値観に出会うと抵抗感が拭えないことも多いのですが、この本は主人公がそんな読み手の心を代弁してくれるため、物語を通して受け入れやすくなっていると思いました。
なので前章の心に残った言葉達も、本を知らずに読むとあまり響かないかもしれませんが、単体でなく物語の中にあることで言葉の力が最大限発揮されていると思います。
自分のことばかり考えてしまうのは、自分が恵まれていることに気づけていないから。
自分の祖先にはきっと、病気や戦争ですごく若くして亡くなった人がいると思います。
『現代の最悪』なんかより遥かに最悪な状況でも生き抜いてくれた、あきらめずにいてくれた人たちがいるから今の自分がここにいる。
"心の豊かさ"なんて言葉があるけれど、そんなことを言えるくらいには物理的に豊かになった環境にいる。これまでの世代の人たちが貯めてくれた運の恩恵を受けている。
この本を読むと、そうやって貯めてもらった恩恵を食らいつくしてこの物語から去るのは避けたいと思いました。
自分のしたことよりも得ることをできる限り少なくして、それでもなおかつ、得るものが多い、そんな人生
を送ってみたいです。
「起こることを楽しむと決めて上機嫌でいる」「誰かの幸せに自分の時間を使う」
身近な人ですら蔑ろにしてしまう*4自分には難易度が高そうですが、意識して実行したい。のちには無意識にできるような人間になりたいです。
あと、
誰かの努力、ひたむきな姿勢は、他の人に幸せをもたらす力がある
という考え方が素敵だなと思います。
その努力が直接自分に還元されなくても、努力する自分の姿がほかの誰かに影響を与えその人の力の源になる。
だから報われない努力なんてない。
そう思うと努力の芽が出ない時期を耐えられそうです。