「外資系コンサルの知的生産術~プロだけが知る「99の心得」~」を読んだ

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外資系コンサルの知的生産術~プロだけが知る「99の心得」~」という本を読みました。

この本は、知的生産に関わる人へ向けて記されています。
コアなターゲットとして想定しているのは

知的生産性を高め、自分が属する組織や社会により良い変化をもたらそうとしている三十代のビジネスパーソン

とのこと。

概要

内容は、知的生産性を向上させるための「行動の技術」つまり「心得」を説明するというものです。
読者が実際に知的生産性を向上できるよう、「行動の技術」に焦点を当てています。どう動き出せば良いかがわかるため、「思考の技術」は知っているもののうまく活用できていない人にも有用な内容です。

著者

著者は山口周さん。
Twitterによると、肩書は以下の通り。

独立研究者、パブリックスピーカー、アクティヴィスト、時には著作家

本の情報による情報をかいつまむと、慶応義塾大学文学部哲学科を卒業し、同大学院文学研究科美学美術史学専攻修士課程を修了。電通ボストン・コンサルティング・グループA.T.カーニー等への勤務経験を持つ。イノベーション、組織開発、人材/リーダーシップ育成、キャリア開発、新しい働き方研究が専門。

構成

本は以下の5章からなり、99の心得が紹介されています。

  1. 知的生産の「戦略」
  2. インプット
  3. プロセッシング
  4. アウトプット
  5. 知的ストックを厚くする

前半4つでは知的生産のクオリティを短期的に高めるための心得を実際の知的生産のプロセスに基づいて紹介。最後の「知的ストックを厚くする」では、知的生産のクオリティを中・長期期的に高める、つまり知的生産の基礎体力をつけるための心得を紹介しています。

はちみつ的各章の抜粋

1.知的生産の「戦略」

いきなり動くのではなくまず戦略を立てる
戦略を立てる上では要求されているクオリティの理解とアウトプットのイメージのすり合わせが重要。
指示を「行動」で出すとアバウトになってしまう(検討とか調査とか言われてもどの程度までかがわからない)ので「問い」で出す。

確かに問いで指示された方が要求されるラインが明確で、指示された側も計画的に動きやすいだろうなと思います。

2.インプット

各問いへの答えをどの情報ソースから出すかあたりをつけ、時間のかかるものから対処していく。
現地に行く、インタビューなどの一次情報は付加価値が付きやすい。情報収集は腰を軽く。「まず行ってみる」「まず聞いてみる」という感じでどんどんやっていくべき。
あんまり学習しすぎても時間に対して得られる効果が減少。高度専門家としてその分野でやっていくわけでないなら、その分野の書籍・解説書を3~5冊程度で十分なはず。

3.プロセッシング

プロセッシングとは情報から示唆や洞察を生み出すこと。
要は情報をどう自分の頭でとらえ直し組み立てていくかの話。
最終的には行動を提案するという気概を持って取り組むべき。
最初から常に論点に対して肯定か否定か自分の立ち位置を明確にすることで、知的生産のクオリティは上がっていく。(異なる立場の人とのディスカッションで磨かれていく)
「考える」と「悩む」は違うので要注意
一時間以上手が動かない、あるいは言葉が出てこないなら、それは悩んでいる。
悩んでいるときは大抵、問いの立て方か情報の集め方に問題があるので見直すべき。
とにかく話す、とにかく書くは意外と有効。
著名な先生の意見とか、定説に流されてはダメ。
思考停止に陥る原因なので、鵜吞みにせず「本当に?」と問い直し、自分の頭で考えるべき

4.アウトプット

アウトプットは少ないほど良いと肝に銘じる。
少ない情報ほど伝わりやすく相手の行動に伝わるということだと思われる。
アウトプットではWhat「やるべきこと」、Why「その理由」、How「具体的なやり方」の3点セットをまとめる。
どの順番で伝えるかは、相手のリアクションを想定して決める。
例えば面白く思ってもらえそうだが違和感を持たれそうな場合、違和感を解消するWhyを最初に丁寧に説明し、そのあとWhat、Howを説明していく。
抽象的でなく具体的に(数字使うなど)、方向性ではなく到着点を伝えることで相手が行動できるようになる。(例:来月までに〇%増を目指す)
アウトプットが出ないときは基本的にインプットが足りていないのでインプットを見直すべき。

5.知的ストックを厚くする

知的ストックが厚くなると、洞察力の向上(似たような事例などをストックに持っていれば、少ない情報からより多くの洞察を得られる)、常識の見直し(本当にそれは常識なのか、より広い視野から見れるようになる)、創造性の向上(アナロジーを活用できる)が期待できる。
どんな分野のストックを厚くすべきかは人により異なる。
読みたい本を読んで、そこから生まれた疑問やさらに知りたいと思ったことをもとに、数珠繋ぎに読書を展開すると知識がストックされやすい。
英語の方が情報量は圧倒的に多いので、英語でのインプットを心がけるとよい。
自分の中で気になることを抽象化して「イケス」をつくり、情報の海からイケスに魚を取ってくるイメージで情報収集するとよい
「タグ付け」と「イケス」は似ているようで異なり、元から自分で「イケス」を持っていることで物事から情報を得る感度が高まる。

感想

「行動の技術」と強調されているだけあって、実際にどう動けばよいか順番まで丁寧に説明された本でした。

インプットの章でインタビューの話が出てきます。
あらゆる情報にアクセス可能な今だからこそ、「直接人に聞ける」さらにいえば「直接人から聞き出せる」能力は重要なものになり、アウトプットの差別化を生み出す要因にもなるだろうと思いました。

あと特に興味深かったのは最終章の知的ストックのお話。
知的ストックが厚いって、いわゆる教養が深い人のことかなと思います。
一見関係のなさそうに見える分野にも関係性を見出し、興味を持って知識を深めているのでしょう。
「イケスをつくって情報収集する」というイメージはわかりやすく、具体的な方法も本には記載されていたので実践したいと思いました。

参考

外資系コンサルの知的生産術 プロだけが知る「99の心得」 (光文社新書) | 山口 周 |本 | 通販 | Amazon

山口周 (@shu_yamaguchi) | Twitter